日本の伝統文化である「畳」(たたみ)。
和室のない住宅が主流となり、畳そのものを目にする機会も少なくなりました。
そんな日本古来の文化を守りながら革新の風を吹かせる企業をご紹介します。
石巻市桃生(ものう)町に拠点を構える「草新舎」(そうしんしゃ)。
国宝・重要文化財を含む200以上の施工経験と確かな技術を持ち、国宝瑞巌寺平成の大修理や、花巻の本願寺派寺院など、多くの寺社仏閣の伝統を守ります。
会社の敷地内にある「数寄屋風住宅」として作られたショールームには、
真壁(しんかべ)
反り屋根(むくりやね)
沓抜石(くつぬぎいし)
面格子(めんごうし)
鎖樋(くさりとい)
などを用い、畳以外にもこだわり抜いた伝統を体感できます。
(雨水の流れをあえて見せる鎖樋)
自然豊かな桃生の地で、鳥の声を聴きながら畳の匂いに包まれていると、懐かしさを感じて心地よい気分に。
北山面皮丸太を使用した大黒柱や、京唐紙(きょうからかみ)のふすま、畳が敷かれた「和風ロフト」も素敵です。
厚さ50センチメートルほどに積み重ねた稲わらを、5~6センチに圧縮した本物の畳床を使用しているため、弾力性にも優れ、座布団はいりません。
「本当の畳は正座をしてみるとよく分かるんです」と三代目の高橋寿社長は言います。
また、草新舎の魅力は、伝統を大切に守ることだけではありません。
「いかに次代の人へ伝え、受け継いでゆくか。」
高橋社長の言葉の端々からは、そういった想いを強く感じられました。
1949年の創業以来、長年に渡り寺社仏閣に変形畳を納品してきた技術は、東日本大震災後、新しいデザイン畳を生み出すきっかけとなりました。
多角形にデザインされた畳「XT」(エクスティー)は業界内外で話題になった逸品。
(デザイン畳「XT」)
(光の当たり方によって色の濃淡が変わります)
もともとデザイン畳の構想は、震災の10年ほど前からあったそう。
震災後、商品化へ踏み切ってからは、とんとん拍子に話が進展し、早1ヶ月で形になりました。
「残された人間として使命を考えた時、自分ができる事をやろうと思った。目の前の扉が開いた感覚があった」と高橋社長。
斬新なデザインながら、天然素材が持つ伝統的な特徴を兼ね備えたXT。
触れているうち、思わず寝そべりたくなってしまいます。
展示場などでも、畳を知らない世代の子どもたちが、よく畳の上で泳ぐ仕草をするのだそう。無意識のうちに、自然を体で感じようとしているのかも知れません。
大量生産によって畳という伝統文化が息詰まっている中で、草新舎だからこそできること。それは、独自性を追求することと、手間をかけること。
「たとえば歴史的な建造物でも、手間をかけ、しっかりと作られた本物は今でも残っていますよね」。
優しく穏やかな口調ながら、高橋社長の言葉には力強さが込められていました。
外国の方や若者向けにおしゃれでカジュアルな『畳のお手入れ帖』を発行し、伝統の文化により親しんでもらえる工夫も、この企業の独自性の一つ。
現在、草新舎の作り出す畳は、寺社仏閣や一般家庭だけでなく、神奈川県川崎市のロックヒルズガーデンや、表参道のスポーツジムなど、若い世代の集まる場所にも納品され、注目されています。
http://soushinsha.co.jp/news/works/130/
伝統を大切にしながら、革新し、伝えてゆく。
「草新」という言葉からは、そんな想いを感じることができました。
ぜひ一度、草新舎の畳に触れてみてください。
素敵な空間のなかで時間が経つのを忘れ、畳と伝統の魅力を体感できるはずです。
株式会社 草新舎ホームページ