コーディネーター紹介01 イシノマキ・ファーム
農業からビールまで。石巻でのWell Beingな生き方
イシノマキ・ファームは宮城県石巻市北上町で、地域の力を活かし共生できる社会を生み出すこと、あらゆる社会的弱者が地域住民と一緒に対等の関係で働くことを大事に「農業」を通じた活動をしています。地域内の耕作放棄地を活用した農業に取り組み、2017 年より本格的にホップ栽培を開始。2022年には石巻初の自社ブルワリー「ISHINOMAKI HOP WORKS」を設立。巻風エールやISHINOMAKI HOPなど人気のクラフトビールだけでなく、HOPを使ったアイスやハーブティーなど6次化にも力をいれています。
代表の高橋さんと事務局長の亀谷さんにお話を伺いました。
食べ物じゃない、心も豊かになる農業
いしのまきファームは農業で就農支援をしていて、そこでは引きこもりとか不登校とかいろんな障害がある人がごちゃまぜで一緒にはたらくんだけど、みんな元気なんですよ。農作業をしているときは話せるんです。笑ったり挨拶できたり。ちゃんとコミュニケーション取れるの。農地にいくと心が豊かになったり、タガがはずれてちゃんと話ができる、多様性とかダイバーシティがすごく生まれやすい場だと思ったの。だからそんな力があるものを活かして、ソーシャルファームという理念のもとで担い手育成ができたらいいなと思って活動しています。
ホップの栽培で見えた次の可能性
「どこか育ててくれるところ探してる」っていう人からホップを預かって、試しに自分で育ててみたのが始まりです。ひゅるひゅる?って簡単に伸びてきて、あっという間にホップができたの!かわいいし香りもいいし。北上町って耕作放棄地が多いけど、ホップはグリーンカーテンで綺麗でしょ。景観もきれいになるし、ホップって珍しいからそれで関係人口が増えたらいいなって。
さらにホップにはアルツハイマー予防や安眠効果があるんです。それを活かしたホップの6次化の商品展開として、ビールとかアイス、ハーブを作っていこうと思って。。この事業を通して雇用の創出を図っていこうというのが狙いにあります。
石巻の街中に街の遺産を継承するブルワリーがオープン
育てたホップをつかって「巻風エール」というビールを作っています。最近までずっと岩手の醸造所に委託してたんです。でも何度も「せっかく石巻でホップを作っているのに、なんで石巻で醸造しないの?」って言われていました。
そんなときに日活パール劇場※が売りにだされてたの。見に行ったら天井が高くて、かまぼこ型で、中央にはポツンと映写機も残っててこれはいい。ここは醸造所にいいなって。
でもコストの面で何度も悩んで、何回も見て考えたんですよ。でもやっぱり醸造所にするならここしかないと思ったの。半年だけ待ってください!ってお願いして、資金調達頑張って、お金が揃ったので醸造所を作りました。1年半の間にドドドドってすすんだの。でも作ってすごくよかった。おかげさまで売り切れるぐらい盛況です。
クラフトビールって若い人のものというイメージがあるでしょう。でもおじいさんとかおばあさんの世代が買いに来るんです。「ビール売ってますか、飲んでみたい」って。しょっちゅう映画館きてたからなつかしいなぁって、日活パールの思い出を語ってくれるの。高校生のとき入れないから壁に耳あてて音だけ聞いてたんだよ?とか。懐かしいことを語ってくれる。
それで、ここが世代間を超えて対話ができるハブになるんだなと思ったの。ビールももちろんそうなんだけど。古き良きものを大切にするのってこういうことなんだなって。私がもしここを壊して新しいきれいなものを建ててしまったら、こういう人たちは来なかったし語ってくれなかったと思う。
大事なものを継承していくっていうことは、10年後20年後に若い人が街の未来を引き継いでいくときに残していかなきゃいけないものだなって思ったんです。農業の新規就労や、担い手育成に取り組みながら、街中にブルワリーがあると、それぞれ点だったものがつながってくるでしょう。
ダイバーシティやソーシャルファームの観点で言うと、健康で健全で元気な若者たちだけが担い手になるわけじゃない。どんな社会的弱者でもいい。石巻のそういうwell being なまちづくりの中に、イシノマキ・ファームが一つコンテンツとしてあってもいいのかなぁって最近考えていて。イシノマキ・ファームは石巻の人たちと一緒に未来の街をつくる中にあって、町の中心部と北上町を繋ぐ役割もあると考えています。
「関係人口」だった6年間
イシノマキ・ファームの事務局長の亀谷も実はいわゆる「関係人口」だったんですよ。正式なジョインは昨年末なんですけど、実は2016年から何度も石巻に通ってくれていて。元々昔の職場が一緒だったので、共通の知り合いが紹介してくれたのがきかっけで、イシノマキ・ファームのゲストハウス「AOYA」にきて、5日間泊まり込みで農業体験をしてくれました。
その後、亀谷が大病を患ってしまうんですね。なんとか治療して職場復帰できるまで回復したけれど、今までと同じ生活に戻るのか悩んだそうです。そんな時に石巻にまたきて、ここで働きたいといってくれました。
「でも実は石巻に行った日に台風がきてて、このままだとAOYAは浸水しちゃうから、もうちょっと安全なところに避難した方がいいと隣町に避難しました。台風が通りすぎるまでそこで一夜を過ごして…朝起きたらスカッとした綺麗な青空が広がっていたんです。それをみて、あぁ…移住しよう、と決めました。
ずっと石巻はいいところだと思って、ボランティアとか遊びにきてました。でも自分の病気っていうライフイベントで考えが変わったんですね。よし移住しよって、結構急展開。笑 高橋さんと働こうって思って来ました。関係人口を増やそうっていうことは、自分自身が体験したことだから、若い人に味わってもらえたらいいなって、私自身が思ってます。」
石巻って人に会いにくる街だなと思ってます。石巻にくる人は「◯◯さんに会いにきました」という人がほとんどなの。場所じゃなくてバイネームで人の名前を出すから。石巻の魅力って人ですよね。多様性がある、人材の宝庫。だから、ふるさとワーキングホリデーをやることで、石巻にいる人と来た人が化学反応を起こして、また新しいことがきっと色々起こるんじゃないかなって思いますよ。