2022年7月より石巻の地域おこし協力隊として、株式会社ヤマナカとともに冷凍殻付き牡蠣の量産体制の確立・海外販路拡大等の任務に従事している埼玉県出身の松本翼です。
早くも三年の任期の終盤を迎える状況の中で、活動レポートを投稿するというミッションがくだされ、このレポートを一体誰に向けてタイプするのか、頭をこねくり回しながらパソコン画面を見つめ、ふっと窓の外を見ると寒風吹き荒れる石巻湾と震災後に建てられた聳え立つ防潮堤を見て、あぁここは移住した石巻なんだ、と改めて感傷に浸りそうになっています。
そんなわけで、宮城県は石巻市の何かに惹かれてこのページまで辿り着き、石巻市地域おこし協力隊に応募しようかどうか頭を抱えながらここまで文字を追っている、そんなあなたに向けて、弾丸を込めるようにタイプしてみます。
結論。応募すべきです、今すぐに。
「行くあてはないけど ここにはいたくない イライラしてくるぜ あの町ときたら 幸せになるのさ 誰も知らない 知らないやり方で」そんな歌詞がありましたっけね。今現在、そんな心境でしょうか。だとしたら、尚更です。
まず、比較対象があるというのは、「それだけでラッキー 生まれてきた甲斐があったってもんさ」です。地元と移住先を比較し、改めて自分が生まれ育った町の良さを再認識することができ、地元では感じることが出来なかった新鮮な感覚を味わうこともできます。
晴れた休日の朝空を見上げた時、何が見えますか。何かの鳴き声が聞こえてきますか。
カーカーカー、きっとカラスが電線の上か何かにとまっていることでしょう。その下には食い散らかされたゴミ袋が散乱しているのでは。
この町では、ピーヒョロロロー、トンビが上空を優雅に旋回しています。ほとんど羽を動かさず、上昇気流を上手に捉えているのでしょう。あやかりたい。そんな想いにさせてくれます。
夜はどうでしょう。きっと、夜空を見上げることはないでしょう。月を眺めることだってしないはずです。
この町では、星空がキレイです。当たり前にくっきりと星が見えます。「I love you」を「月がキレイですね」と翻訳した漱石氏の有名な逸話も納得できてしまう、そんな月を眺めることもできます。
あなたがサイクリストなら北上川の河川沿いの弾丸ストレートを疾走できます。
あなたが走り屋ならタイトなカーブが連続して続く牡鹿半島を攻めることもできます。
あなたが猫好きなら猫島で有名な田代島を訪れてみては。
あなたが漫画好きなら石ノ森萬画館なる近未来的な造形をしているミュージアムに足を運び、その足で元気いちばなる石巻の地域物産店で買い物を嗜んではどうでしょう。
あなたが仏閣に興味があるのならフェリーに乗り金華山を訪れ黄金山神社に手を合わせてみるのもいいかもしれません。
あなたがWinter sportsを楽しむ方ならここにはゲレンデが、ありません。石巻は意外にもほとんど雪は積もりません。
あなたが冷房を憎む末端冷え性に苦しむ体質ならばここでは奮闘すれば夏でもエアコンなしで乗り切ることは可能です。
あなたがあなたらしく居たいと思うならば・・・
今日は日曜日。いつもより少し早起きして。スタバで買ったばかりの豆を挽く。バッハ式だなんてこだわりの淹れ方を見様見真似でやっちゃって。お気に入りのマグボトルに注ぎ入れたら徒歩圏内にある防潮堤に足を運ぶ。ひとまず深呼吸をしてみる。まだ誰にも汚されていない空気と潮のほのかな香りが鼻に入ってくる。マグボトルを開ければ淹れたばかりのコーヒーの香りが今日の始まりを祝福してくれているよう。少し腰かけて本でも読もう。あっ忘れたな、MP3は持ってきたのに、まぁいいや。水平線近くに見えるタンカー船を眺めながら、少し考えてみる。
私らしくって何だろう。私ってどうしてここにいるんだっけ。そして立ち上がる。
「まぁ、いいっか。ひとまず明日も働こうっと!」
MP3を装着。流す曲はAll shuffleにしてみる。あら、丸みを帯びたギターのイントロが流れてきた。ドン!ドラムの音が一発鳴ったと思ったら
「Wouldn’t it be nice if we were older~」
キャッチ―なメロディに一気に心を鷲掴みにされる。この曲なんだっけな。出てこない。何だっけ何だっけ。やはり思い出せない。たまらず液晶を確認する。邦題のタイトルが顔を覗かせたばかりの太陽の光と共に、これでもかと耀きながら目に飛び込んでくる。
「素敵じゃないか」
石巻地域おこし協力隊、素敵ではありませんか?